甘い恋じゃなかった。
「わー!すごい!綺麗ですねぇ、桜!」
「………」
目的地は閑静な住宅街の中にある。
その途中にある公園には満開の桜が咲き乱れていて、思わず足を止めてしまった。
「………」
が、桐原さんといえば、興味なさそうに一瞥しただけで、スタスタとその前を通り過ぎていく。
「ちょっと!?待ってくださいよ!」
慌てて追いかけると、
「花粉症なんだよ」
ブエックショイと大きなクシャミが返ってきた。今気づいたが、よく見ると目も真っ赤だ。
「え、大丈夫ですか?帰ります?」
「いや、いい。
なんとしても…なんとしても俺が作るケーキと同レベだっつーケーキを食わねぇと…気になって夜も眠れねぇだろうが!!!」
桐原さん…やっぱりすごくケーキが好きなんだな…。