天国の不動産
葵はその日初めて事故現場を訪れなかった。
当初は連れ戻されていたところ、自分から事故現場から戻ってこれた日。
きちんと目的を持って外に出れた日。
笑えた日。
泣かなかった日。
アルバイトを始めた日。
毎日葵を見てきて、少しずつ僕を忘れて元気になっているのは分かっていた。
だけど、あの日の12時半の待ち合わせ。
葵は毎日僕を待ってくれていた。
周りが病的だと言おうと、正直僕は嬉しかった。
だけど今日、葵はまた一歩前に進んだようだ。