くれなゐ症候群
「奈緒になにやってんだよ」
叫ぶように言葉を放つ。


「言ってもわからないだろ」



そう。よく分からない。
まだ理解も知識も及ばないことを、翔一は自分にしようとしている。


「帰れよ」

「奈緒を放せ!」

修二がこちらへ駆けてくる。

体当たりするように、つかみかかろうとする。
三つも年上の兄に。凶暴な刃物だと、誰よりも知っている相手に。


まっすぐ向かってくる修二を、翔一の蹴りが薙いだ。
あざやかな弧を描く足さばき。ひゅうと、空気を切り裂く音まで聞こえそうな。


横ざまに地面に倒れこむ修二。
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