黒い心の片隅の、想いがあなたで消えた時
「宮野」
そう呼ばれてドアから視線を戻す。
そこには、腰が抜けてしまったみたいに椅子にもたれた状態の先生。
先生のこと、すっかり忘れてた……。
気まずくなりながらも、先生を見る。
「ちゃんとお母さんと話し合いなさい。それでもう1回提出な」
先生はまだ何も書かれていない、進路希望調査を私に出した。
「さっきの様子だと、今までのも全部自分で書いてたんだろ。すっかり騙されたよ」
まぁ、高校入ってからの書類は全て私が書いてるから、お母さんの字を知らない先生が見抜けるわけがない。
字もちょっと変えてるし、今どき自分でハンコ持ってるのも当たり前だし。
「進路はこのままで。勝手にさせてもらいます」
お母さんも言ってたじゃん。