黒い心の片隅の、想いがあなたで消えた時
「パパだぁ~!」
紬が大好きなアニメなのにそっちのけで、リビングを出て行く。
お父さんが帰ってきた。
こんなに早い時間に帰ってくるということは、またお母さんとケンカになるんだろう。
悪いことは続くものだ。
紬はお父さんの手を握り、リビングに入ってきた。
「雫、ただいま」
「おかえり。夕食は?」
「まだ食べてない」
「分かった」
短く返事をして、料理する手を速める。
お母さんもたまに早く帰ってくることがある。
昨日は家に帰ってきていなかったから、今日はいつもより早く帰ってくる可能性が高い。