ぬくもり
正直な話、残業なんてほとんどなかった。



仕事が終わり家に帰るまでの僅かな時間を毎日のように幸代と過ごしていた。


ご飯を作って、俺を待つ美沙に申し訳ない気持ちはもちろんあった。

ただ、いずれ終わってしまうだろう幸代との時間を少しでも多くもちたかった。


一緒に隣で眠ってやる事もできない。


休みの日、一緒に過ごしてやる事もできない。


会社でも関係を隠して、こそこそ付き合わなきゃいけない。


家に帰ってからは連絡を取る事もできない。



そんな付き合いの中、幸代は何の文句もグチすら言った事はなかった。




そんな彼女に、別れ話を切り出さなきゃならないのは、気の重い話だった。


何よりも俺が幸代と別れたくなかった。

でも、子供ができたとなると、このまま幸代との関係を続けていく訳にもいかなかった。


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