ぬくもり
…司と別れよう。



私の中で1つの決意が固まっていく。




今のままじゃ、優の為には絶対に良くない。



こんなに気持ちをかき乱されたら、また同じ事を繰り返してしまうかもしれない。



それだけは、何が何でも避けなきゃならない。


これ以上、優を苦しめる訳にはいかない。



司は、優の父親らしい事は何もしてない。


優も決して司にはなついていない。



なら…優と2人で気持ちを穏やかに暮らす方が、優にとっても私にとっても幸せなのかもしれない。



私は優を連れて区役所へ行った。


離婚届を取ってくる為に…。



貰ってきた離婚届を丁寧に記入した。



記入しているうちに、涙がこみあげてくる。



まだ幸せだった頃の記憶。



司の子供みたいな無邪気な笑顔。


私を呼ぶ優しい声


私の頭をクシュクシュする優しい手のぬくもり。




「…つかさぁ」



身を引き裂かれるような思いだった。



どんなに司を愛しているか思い知らされる。




こんなに愛しているのに、こんなに想っているのに、終止符を自分で打たなければならない。




泣いている私の背中に、優が抱きついてくる。



「まま、めんとぉ」



優は後ろから私の背中を、上下にゆっくりさすってくれる。


「優、ありがとう。
ママ、強くなるからね。
ありがとう。」



後ろにいた優を抱きしめ、優の頭を撫でながら私は大声で泣いた。

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