ぬくもり
5時30分
残業がなければ司が会社から出てくる時間。



私と優は、司の会社が入ってるビルのロビーに座っていた。


そのビルのロビーは、エレベーターからは近い位置で降りてくる人を見渡す事ができ、なおかつ出入り口からは少し離れた場所にあたるので、出口を目指してる人の目につきにくいという、今の私には絶好の位置にあった。





離婚届を書き上げた私は、私達を苦しめてきた司の女をどうしても見たくなった。




2人で居るところを抑えていれば、司も言い逃れる事はできない。



私もこのままでいるよりは、完全な決定打がほしかった。



司が女と居るところをこの目で見ればきっと諦めもつく。



それが考えに考えた末に出した私の結論。





私は降りてくるエレベーターの人混みの中から、必死に目を凝らして司の姿を探す。



明日は土曜日で休みという事もあり、5時半を過ぎた頃には、降りてくるエレベーターから人が次々と溢れでてくる。



20分も過ぎた頃、まばらになってきた人の中にようやく司の姿を見つける。



私に緊張がはしる。


私は見つからないように、こっそりと司の後を尾けた。

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