ぬくもり
病院に着いた私達は受け付けで聞いた病室へと向かう。


司はタクシーの中で、目を覚ました優の手を引き私の後ろをゆっくり歩く。



私の足取りは、まるで鉛の錘でもついてるように重い。


何度も立ち止まってしまう私を、励ましてくれるかのように、司がポンポンと背中を叩く。



私は、病室の前に立った。


このドアを開けたらあの人がいるんだ…


「美沙、行こう。」



あまりにも、そのまま動けずにいる私に、司が優しく言った。



「行かない…嫌だ。
行きたくない。

会いたくない!」



そう言って逃げだそうとする私の腕を、司が捉えて離さない。

それでも私は、司に背を向け腕を振りほどいて逃げようとした。


その瞬間、私は後ろから司に抱きしめられていた。



「大丈夫。
ちゃんと側にいるから。」


司が耳元で優しく言った。

それでも、私は首を横に振る。



司が私の体を引き寄せ、私は司の胸の中にいた。


「大丈夫。
美沙、大丈夫だから…。」


司は何度も同じ言葉を繰り返し、私を抱きしめながら、優しく私の頭を撫でてくれた。



「行こう。」


私は黙って頷いた。


司が病室のドアをノックする。



「どうぞ。」


聞こえてきた声に、私の鼓動は早くなる。

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