ぬくもり
「あっ!
こんな時間だ。
翔ー帰るよー!
じゃあね、美沙さん、優ちゃん。」



腕時計に目をやり、凌君は慌てて翔君の手を引いて帰って行く。



ふと気付くと、公園内も子供達が帰って行き、人影もまばらになっていた。


昼の賑やかさが嘘のようだった。



いつもと同じ夕暮れどきの公園が、今日は酷く悲しく映る。


「優も帰ろう。」


まだ外で遊びたがりぐずる優の手を引き、家に連れ帰る。



家についても、まだ優は泣き止まない。


「もう、優そろそろ泣き止んでよぉ。」



涙と鼻水だらけのグチャグチャな顔で、私の胸に顔を埋めながら泣き続けるうちに、優は眠りについてしまった。



そっと優を下におろし、優の涙と鼻水で汚された服を部屋着に着替える為、寝室に行った私の目に、司の携帯が留まってしまう。



見ちゃいけない、見ない方がいい。



そう思う気持ちとは裏腹に、司の携帯に手が伸びる。



震える指でゆっくりとボタンを押す。



携帯のメール履歴を開いた時に飛びこんできた、瀬田幸代の名前に、私は愕然とした。



だから…
見ない方がいいって思ったのに…。



自分の馬鹿さ加減を呪った。



まだ、続いてたの?

ずっと、続いてるの?


司は、私と優をずっと裏切り続けてたんだ。



私はその場に崩れ落ちる。



頭の中は、裏切りの文字でいっぱいになっていった。

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