あの日の忘れ物
所々道も変わっていたが、何とか家が見える所まで来られた。


良かった、うちは変わってない。


でも家の近くまで来ると、私は足を止めた。


男が一人、私の家の様子を伺っていたからだ。きちんとしたスーツ姿の若い男だったけど、何だか怪しい。うちの門の中をチラチラと様子を伺っている。


悪質な訪問販売?


十二年後の未来にどんな犯罪があるのか分からないけど。声を掛けたら諦めて逃げてくれるかも知れないと思って、私はそうする事にした。先制攻撃だ。


「あの……」


私が声をかけると、男は心臓が飛び出したのかと思うほど驚いて振り向いた。


そこにはどこか見慣れた顔が……


「と……朋?!」


今度は私が驚いて声をあげてしまった。




――――藤田 朋(ふじた とも)




私の幼馴染み兼、喧嘩友達の憎たらしい男。保育園からずっと一緒で、今の中学校では同じクラスだ。


顔つきは大人になっていたけど、たれ目は変わってない。




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