夢で会いたい


来たことのない駅だったけど、3番線までしかないから迷う方が難しい。

駅を出て周りをキョロキョロと見回すと、バッタかカマキリみたいな色をした軽自動車からサングラスをかけた女性が降りてきて、私に向かって手をあげた。

「芽実ちゃん!こっち!」

美弥子さんだ。
御年77歳になる、私の祖母である。




「ちょうど午前中に荷物届いてたよ。思ったより少ないんだね」

「うん。だいぶ捨てたから」


本当のことを言うと、処分した物のうち半分くらいは〈売った〉。
廃棄だってタダじゃない。
現金は貴重なのだ。


「軽く掃除機はかけておいたけど、拭き掃除はしてないから自分でやってね」

「うん。ありがと」


圧倒的に交通量の少ない道路を、美弥子さんはスイスイと車を走らせる。

ファミレス、回転寿司、コンビニ、ドラッグストア・・・生きていくのに困らない以上のものは揃っている。
おっと、靴屋はつぶれたか。

「あ、ハローワークの場所は?知りたい?」

「・・・うん。お願いします」

ガラガラの二車線道路で、美弥子さんがハンドルをキュッと回した。


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