夢で会いたい
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「それ以来つきまとわれて迷惑してる、というわけね?」

真由は一転して心配そうに顔をゆがめる。

「迷惑というほど強烈じゃないけど、ちょっと困ってるかな」

「しつこくされてるんでしょう?」

「仕事の時はほぼ毎回駐車場で待ってる」

「危害加えられたりしてない?」

「『送る』っていうのを断ったら笑顔で手を振って見送ってくれるだけになった」

疑問符たっぷりで首をかしげる。

「押して引いて、っていう駆け引きかな?」

「『押して引いて』というより『押し切らない』って感じ。本当に迷惑だって感じる一歩手前でやめるの」

「・・・なんだか、むずがゆいね」

「まさにそうなの」

もっと態度が明確ならきっぱり断れるのに、ただあたたかく見守られてるだけって。

「悪い人じゃないのはわかってるし、邪魔っていうほどじゃないから放置してるんだけど、視界には入るから」

「それで彼氏を作ろうって思ったんだ?」

「『彼氏がいるから困ります』って言えば角が立たないでしょ?単純に婚活したいのに出会いがないっていうのもある。出会いようがないんだもん。若い独身男性がいないんだから」

真由は何かに気づいて嬉しそうに身を乗り出して来た。

「ねえ、芽実ちゃん。その〈トモ君〉と付き合ったらいいんじゃない?」

なんって恐ろしい発言を・・・!

「ナイ!絶対全然ナイ!出会った瞬間に感じたんだもん。『こいつはナイ!』って」

「顔がよくないの?性格に難あり?ものすごく服のセンスがないとか?」

「顔は・・・まあ普通かな。目が印象的なくらい。性格は問題ないと思うよ。地元の奥様たちからは評判らしいし。服は作業中はおっさんだけど、普段はごく普通。高いものは着てないけどね」

「何がダメなの」

真由は責めるような口調になっている。
友達なんだから味方してよー。

「仕事だね。アルバイトの掛け持ちしてるのと同じだもん。貧乏そうだし、何の保証もないし、休みも不定期(というより自分の気持ちひとつ)だし、出世の見込みはないし。あとは直感」

「直感って、そんなあいまいな」


もどかしい。
真由にこの気持ちをどう言ったら伝わるのか・・・。

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