夢で会いたい
「芽実ちゃん、お疲れさま」
「・・・ただいま」
「どうしたの?元気ないけどなんかあった?」
「別に~。さっさと帰るよ」
こんな風にこの狭い町で毎日送り迎えしてもらって、噂にならないはずはない。
「芽実ちゃん、結婚はいつなの?」って道を歩けば聞かれるようになった。
こんなに一緒に行動していて付き合っていない、という関係は理解できないらしい。
「トモ君、いつもごめんね。どうぞどうぞ、上がっていって!」
帰宅後、家で一緒に美弥子さんのご飯を食べることもほぼ日課となってしまい、なし崩し的にヤツは私の生活に入り込んでいる。
「そういえば、あんたって実家暮らしでしょう?ここでしょっちゅうご飯食べててお母さんは困らないの?」
「仕事のために別にアパート借りてるんだ。そっちと半々で生活してるの。夜中まで起きてると親はうるさいからね。だから母親は気にしないよ」
「へー!仕事部屋なんか持ってるんだ!本物の作家みたーい!」
「一応、本物の作家なんだけどな」
「それだとご飯はどうしてるの?」
美弥子さんがトモ君のお皿に大根を追加しながら聞く。
「実家の近所なので帰って食べることも多いです。あとは、まあ適当に・・・」
美弥子さんの表情が剣呑なものになる。
適当に「自炊してます」とか言っておけばいいものを。
この辺りの人はみんな食べさせたがりなんだから。
「トモ君、お茶碗寄越して」
美弥子さんはマンガに出てくるような山をお茶碗の上に築いた。