夢で会いたい
次の日曜日。
私はリビングでお茶と菜穂子さんのお漬け物を友に町の広報を読んでいた。
表紙はバスケットボールの全国大会に出場する小学生。
こういうのを見て「町民は孫を応援する気持ちになる」のだそうだ。
(この発言からも町民の平均年齢の高さがうかがえる。)
町のイベント情報や図書館だより、最後のページは出産と死亡欄だ。
生まれたのは3人なのに、亡くなったのは・・・20人以上。
人口の自然減が甚だしい。
新しく移住してくる人なんて転勤族以外にはほぼいないだろうし(珍しい例が私だ)、この現象に歯止めをかけるものは何もない。
不便だ、不便だ、と思っていたけど、住めば都とはよく言ったもので、慣れるととても住みやすいところだ。
物がないことをつまらなく感じていたのは最初だけで、なければないで物欲そのものがなくなった。
東京にいたとき、バカみたいに似た服や小物、あまり使わない便利グッズを買っていたのは何だったのだろう。
けれど、この居心地の良さをわかりやすくアピールできる言葉は見つからない。
「ものが少ないからいい」という魅力は「何かがある」魅力に比べると、どうしても見劣りしてしまうからだ。
いいところなんだけどなー。
物も娯楽も少ないけれど、犯罪も災害も少ない。
選べない、というのは不便なようで、迷わない分心の負担は軽いのだ。
心の平穏より魅力的な商品はないと思う。