夢で会いたい

「芽実ちゃんは特別なんだ。僕には芽実ちゃんしか見えていないし、芽実ちゃんにしかドキドキしない。君が言ったささいな言葉もちょっとした仕草も、ひとつひとつ真空パックにして保存できたらいいのにって思ってる。そうしたら一生それを眺めて生きていけるのに」

「やめてよ。『エロ尻学園』眺めてるくせに」

「あれは・・・だって、表紙の子がちょっと芽実ちゃんに似てたから。芽実ちゃんを妄想してるって言ったら満足してくれる?」

「いやああああ!!言わないで!!」

トモ君は楽しそうにくすくす笑う。

「でも一日中芽実ちゃんのこと考えてるのは本当。もう起きたかな?僕のお米食べたかな?今日は仕事かな?って。お昼は何を食べるのかな?パンだったら芽実ちゃんはサンドイッチが好きなんじゃないかな。意外とカツサンドが似合う。飲み物はきっとカフェオレだけど、ペットボトルのお茶もバッグに入ってるんだろう。コンビニから帰ってきたらお客さんに話しかけられて、休憩時間なのに本を探すの手伝ったりして、でも結局探せなくて工藤さんに見つけてもらうんだ。それでご飯食べる時間なくなって、サンドイッチひとつを無理矢理カフェオレで流し込もうとして口の中がいっぱいになるんだよ。あーかわいい。抱きしめたい」

「最後に変なセリフが入ったよ。あと、カフェオレは合ってるけどサンドイッチはたまごサンドね」

「わかった。訂正しておくね。とにかく、俺の毎日はいつも君でいっぱいなんだ。昔の人は夢に誰か出てきたら『その相手が自分を好きなんだ』って考えたらしいね。それが本当なら、芽実ちゃんの夢には毎日僕が出てると思う」

都合いい解釈だなー。

「あんたの夢に私が出てもそれはただの妄想だからね。変な勘違いしないでよ」

「僕はもうずっと君の夢を見てる。それもあと少しだけど」

トモ君はこんな風に気持ちを真っ直ぐ言葉にする。
私の目を見て妙なセリフを恥ずかし気もなく。

けれど、どういうわけか私に言われている気がしないんだ。

想いを届けようという気持ちがない。
そう思えてならない。




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