夢で会いたい



車内はいつになく落ち着いた雰囲気だった。
いつもよりトロッと甘いトモ君に、私がモジモジしてしまうからだ。
調子狂う。

「あの、えーっと、ありがとう。仕事忙しいのに」

「行き詰まってたから、ちょうど芽実ちゃんに会いたかったんだ」

「だけど家族でもないのに迷惑かけちゃった。ごめんね」

「家族ではないけど、一応現段階では彼氏候補だからね」

ちょっとしおらしくしたらすぐ調子に乗りやがった。

「その約束まだいる?あんたの作品を理解して支えてくれる人は他にいっぱいいると思うけど?」

「芽実ちゃんとの約束が、きつい仕事を支えてくれるんだ。今の僕には何より必要。最後まで取り上げないで」

「あんたの〈生きる力〉は私の他にあるでしょう」

あ、失敗した。
ついつい根に持ってることが出ちゃった。

「ああ、あれか」

トモ君は笑みを深くした。

「新聞記事ってすごいね。全然しゃべれなくて、記者の質問に「うんうん」ってうなずいてたら、全部僕がしゃべったみたいになってた。楽で助かったけど」

そんなことだろうと予想はしていたけど、予想以上にしゃべってなかったようだ。

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