向日葵の天秤が傾く時
「聞きました?瀑蛞拓、訴えられるって話。」


「聞いた聞いた。狄銀行から私文書偽造で、でしょ。」



瞠屡からの問いに鮖は答える。


数日後の事務所内は瀑蛞拓の話題で持ちきりだった。



「でも寒紺弁護士って瀑蛞拓の友人でしたよね。利益相反になるんじゃ?」



「財占法律事務所は切ったんだ、瀑蛞拓を。」


「うわ~シビアですね。」



驛の疑問に卿焼は嫌そうに答えるが、学未は言葉の割に自業自得だという表情。



「私欲じゃ俺だって寒紺弁護士と同じ、弁護する気も失せる。」



拳煙と言わない辺り節が抱く嫌悪感のせいだろう。



裏切るつもりはない。


だが、利益を生むつもりもない奴を足枷などにもしない。


金をむしり取る為のただの踏み台であり、そこに利用価値など存在しないのだから。



拳煙のそんな心の内が聞こえてきそうだ。



「衢肖君、色々言ってるが?」


「大丈夫よね?」



「はい。なんたって俺の女ですから。」



薔次と樺堀が尋ねてもどこ吹く風。


ただ、記憶力だけ良いのは内緒ですよと巫莵は笑った。




不条理に勝るは金でも法律でも無く、愛し愛される関係である。
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