向日葵の天秤が傾く時
「さて、お聞かせ願えますかな。」



態度にも声色にも、幾分か鋭さを含んだ薔次が促す。


上座に阜紆奢、向かいに薔次と節が座り、その後ろに巫莵と驛が控える。


1対4と少々アンバランスだが、応接室にはニ人掛けのペアソファーしかないので致し方ない。



「依頼人は狄(エビス)銀行本部の常務取締役、瀑蛞拓(タキ カツヒロ)。昨日、表の歩道にて話をしていたところ、そちらの砧怙驛さんに話を中断された上に、一方的に殴られたと。」


「は?殴ってなんか…!」



「砧怙、落ち着け。……寒紺さん、こいつは弁護士としてまだまだ未熟者ですが、脈絡も理由も無く人を殴るような性格ではありません。話をしていたとの事ですが、瀑さんは誰とされていたのですか?」



決め付けた阜紆奢の口調に、前へ出かかる驛を止めながら節は冷静にそして丁寧に疑問点を口にする。



「それがそもそもの原因であり、示談の条件でもあります。……瀑の提示した示談の条件は、衢肖巫莵という女性の引き渡しです。」



「「はい??」」



疑問符が2人分、節と驛のものだ。



しかし薔次は顔をしかめ、巫莵に至っては顔色が青から白になりかけていた。
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