強引上司にさらわれました

「うまい」


すぐに出てきた感想に、『やった』とばかりに小さくガッツポーズをする。

そんな私を見て、課長がふっと笑みをこぼした。
それがまた、今日仕事中に見せられた優しい笑顔だったものだから、鼓動が乱れる。
その上、課長が「上出来だ」と頭をポンポンしたものだから、今度は逆に心臓が止まりそうになった。


「よし、早速食べよう」


そんな私に気づくことなく、課長はサフランライスを皿に盛り、それを私へ差し出す。

ポーッと呆けたようにしていると「おい、泉?」と急に呼び掛けられた。

――い、泉!?
今、呼び捨てた……?

咄嗟に辺りをキョロキョロと見回す。
ここに管理人さんは……いない。

それなら、どうして呼び捨てに?

訳のわからないまま、三連発の攻撃にしてやられっぱなし。
なにがどうなっているのか、課長を前にオロオロしてしまった。


「泉?」


もう一度名前を呼ばれて「はい!」と背筋をピンと伸ばす。

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