強引上司にさらわれました
そのグラスを課長に持たせ、勝手に「チン」と合わせて乾杯する。
ひと口飲んでみれば、自分で言ったとおりのいい冷え加減だった。
高級だけあって、口当たりもまろやかだ。
「美味しい。……って、課長も飲んでくださいよ。スケジュール的に夕食の時間にはちょっと早いんですけどね。早い分にはいいですよね?」
強引に勧めながら、取り皿に料理を持っていく。
急いで作ったから味の保証はないけれど。
ないよりはマシだろう。
「この生ハム、ちょっと高かったんですけど、思い切って買ってみました」
こちらの皿もまた、課長に無理やり持たせた。
そうして自分も口に運び、ここで初めての味見だ。
「うん、我ながらいい味。ワインと合う合う」
一気にグラスを空にする。
もう一杯とばかりに注ぎ、それもひと思いに飲み干した。
……ふぅ。
さすがに一気に二杯はキツイかな。
でも、今夜は特別だ。
どうしようもない憂さを晴らすには、ガンガン飲むに限る。