強引上司にさらわれました

そのグラスを課長に持たせ、勝手に「チン」と合わせて乾杯する。
ひと口飲んでみれば、自分で言ったとおりのいい冷え加減だった。
高級だけあって、口当たりもまろやかだ。


「美味しい。……って、課長も飲んでくださいよ。スケジュール的に夕食の時間にはちょっと早いんですけどね。早い分にはいいですよね?」


強引に勧めながら、取り皿に料理を持っていく。
急いで作ったから味の保証はないけれど。
ないよりはマシだろう。


「この生ハム、ちょっと高かったんですけど、思い切って買ってみました」


こちらの皿もまた、課長に無理やり持たせた。
そうして自分も口に運び、ここで初めての味見だ。


「うん、我ながらいい味。ワインと合う合う」


一気にグラスを空にする。
もう一杯とばかりに注ぎ、それもひと思いに飲み干した。

……ふぅ。
さすがに一気に二杯はキツイかな。

でも、今夜は特別だ。
どうしようもない憂さを晴らすには、ガンガン飲むに限る。

< 117 / 221 >

この作品をシェア

pagetop