強引上司にさらわれました
「今回のこと、課長に相談は?」
私の質問に舞香ちゃんが目を逸らす。
言っていいものか迷っているように見えた。
「お願い。聞かせて」
声のトーンを落として、ゆっくり噛みしめるように言う。
私は、決して拒否できない空気を醸し出した。
「していました……。彼女がいる人を好きになったと」
それを察知した彼女は、観念したように答えた。
「……その人が誰かということも?」
彼女が小さく頷く。
スタートの合図を待つ間の緊張感に似たものが、私の体を包み込んだ。
「それで課長はなんて?」
「“本気で好きなら覚悟を決めろ”と」
「……どういう意味?」
「想いを伝えろということだと……」
信じられなかった。
舞香ちゃんをそそのかしたのは、課長だったのだ。