強引上司にさらわれました
体から力が抜けていく。
空気を抜かれたビニール人形にでもなったようだった。
兄なら、妹がとんでもないことをしないように導いてあげるものじゃないの?
結婚を数ヶ月後に控えた達也に想いを伝えろなんて、あまりにも横暴すぎる。
当たって砕けろというのは、なにに対しても推奨できることじゃない。
課長は、自分の妹かわいさに私の幸せを壊したのだ。
その罪の意識から、私を部屋に置いた。
もしかしたら課長も私のことを……なんて期待するとは、私はなんて愚かなんだろう。
気持ちなんか、いっさいなかったのに。
それなのに、私を翻弄して。
妹の幸せを守るために私の気持ちを利用しただけだったと知って、すべてが崩れていく。
どうしようもなく心細くて、世界中に自分ひとりしかいなくなったような気分だった。
そのときふと、課長が言った言葉を思い出した。
『ごめん、悪かった』
それは、このことだったのだ。
私の結婚をダメにしたことに対する謝罪。
そのひと言で済ませようとしていたなんて……。
「……舞香」
茫然としている私の背後から、課長の声が聞こえた。