強引上司にさらわれました

私たちの様子を見て、なにがあったのか課長は悟ったのか、舞香ちゃんの名前を呼んだあとの言葉が続かない。


「お兄ちゃん、ごめんなさい。私……」


舞香ちゃんが立ち上がる。


「舞香は帰るといい。あとで連絡するから」


彼女に帰るよう促すと、部屋は課長と私のふたりだけになった。

物音ひとつしない部屋はそれだけで静寂なのに、そこに重苦しさが加わる。
課長とふたりでいて、これほどまでに息苦しさを覚えるのは初めてだった。


「麻宮、話したいことが――」

「言い訳なんか聞きたくありません」

「言い訳じゃない。俺の話を聞――」

「もういいです」


課長の言葉をことごとく遮って、なんとか立ち上がる。
心と同じように、足までふらついた。


「今日までお世話になりました」


頭を下げて課長の前を通り過ぎる。

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