強引上司にさらわれました

「おい、麻宮!」


課長の呼び止める声も無視し、部屋に駆け込んだ。
大きなバッグに片っ端から荷物を詰め込み、玄関へ急ぐ。


「どこへ行くつもりだ」

「課長には関係ありませんから。残りの荷物はあとで取りに来ます」


事務的に告げると私の腕を掴んだ課長を振り払い、玄関から飛び出す。


「泉!」


ドアが閉まる寸前に聞こえた課長の声は、私の頭の中で何度もリフレインした。


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