強引上司にさらわれました
「裂かないように、なに?」
「……自分に私の気持ちが向くように仕向けた」
そうだとは思いたくないけど、そうなのだ。
私が達也を奪いに走ったら、舞香ちゃんがつらい思いをする。
だから、それを避けるために……。
私を自分のそばに置いたのは、見張る目的もあったのかもしれない。
見せられた優しさも笑顔も、全部嘘っぱちだった。
あの夜のキスも、セックスも。
舞香ちゃんを守るためにしたことだったんだ。
そして、私はその罠にまんまとはまってしまった。
「ひとつ聞いてもいいかな」
美優の目が私を真っ直ぐに捕らえる。
聞かれたくないことを聞かれるだろうということは、その探るような視線からわかった。
「朝倉課長のことが好きになっちゃった?」
予測どおりの質問だった。
清々とするほど直球で聞かれたものだから、私も素直に認めてうなずいた。
「泉の中では、舞香ちゃんと達也くんがどうこうじゃないんだね。もうそれは心の整理がきっちりできていて、新たな問題が勃発したというわけか」