強引上司にさらわれました
美優の言うとおりだった。
達也ではしなかったドキドキも嫉妬も、全部が課長の思うままに作られたシナリオのようなもの。
私はそんなことも知らずに、うっかり課長を好きになってしまった。
私の恋愛運の悪さときたら半端ない。
「課長とそのことで話はしたの?」
「……ううん。課長のマンションを飛び出しちゃったから」
「なーんだ。それじゃ、課長から直接聞いたわけじゃないんだね」
「直接聞かなくたって、舞香ちゃんから兄妹だと聞かされれば、それで十分じゃない?」
両親の離婚で引き裂かれた兄と妹の愛情物語。
そういうことなのだ。
運悪くも、私はその脇役に抜擢されてしまった。
「でも、課長の口からちゃんと話を聞いたほうがいいと思うな。私、朝倉課長がそんなことをするような人に思えない」
「とにかく、事実はそういうことなの」
妙に課長の肩を持つ美優に、ちょっとした寂しさを感じてしまう。
つらい思いをしたのは私のほうなのにと、自分本位で考えてしまうことも今夜は許してほしい。