強引上司にさらわれました
ふたりが公にしていないのに、私が美優に話してしまっていいのか迷ったけれど、私ひとりの胸に収めておくには重すぎた。
美優は驚きに目を丸くしたまま、固まってしまった。
「え、だって、名字が」
「両親が離婚してるんだって」
「……そうなんだ」
「課長が、舞香ちゃんを達也にけしかけるようなことをしたみたいで……」
美優が「えっ……」と言ったまま、言葉を詰まらせる。
すぐには信じられないといった様子だ。
私だってそうだったのだから当然。
「ちょっと待って。それじゃ……」
美優は、点と点を結びつけるように宙に視線を彷徨わせたあと、私に不安げな眼差しを向けた。
「朝倉課長は、罪滅ぼしで泉を部屋に置いたの?」
「それもあるけど……」
「ほかにもなにかあるの?」
美優が私の目を覗き込む。
「私がふたりの中を裂かないように……」