強引上司にさらわれました

◇◇◇

ホテル暮らしを始めて三日が経過した。
安い料金とはいっても、いつまでもホテルにいるわけにはいかない。
そろそろアパート探しもしなくては。

昨日、達也から呼び出されて、私が立て替えておいた新婚旅行の代金を返してもらったのだ。
そのお金があれば、敷金礼金はまかなえる。

仕事の合間を縫って、こっそりアパート情報サイトで物件をチェックいると、村瀬さんが斜め前の席から私を呼んだ。


「麻宮さん、部長のお客様が帰られたみたいですよ」


部長のデスクを見ると、やれやれといった様子で腰に手をあてながら椅子に座るところだった。


「出したお茶、片づけてきますね」


並びにある給湯室からお盆を持ち、応接室へ向かう。

湯飲み茶碗をお盆にのせ、いざドアを開けようとノブを持とうとしたときだった。
反対側から突然ドアを開けられたものだから、茶碗が倒れて残っていたお茶がお盆の上にこぼれてしまった。

あーあ……。もう、誰なの?

そう思いつつ顔を上げると、そこにいたのは朝倉課長だった。
ドアの隙間から体を滑り込ませて中へ入り、素早く鍵をかける。

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