強引上司にさらわれました
◇◇◇
それから数日もしないうちに、課長がグローバル部の次期部長になるという話は、会社中のみんなの知るところとなった。
「しかしすごいですよねぇ、あの若さで来年は部長なんですから」
その話を今朝、出勤してきたエレベーターの中の噂話で知ったばかりの野沢くんは、人事部に入ってくるなり、しきりに感心していた。
まだ出勤してこない課長のデスクを眺め、「それじゃ、課長の後任はこの俺かな?」なんておどけてみせる。
「そうだね、そうだといいね」
適当にあしらうと、「麻宮さん、本当にそうは思ってないでしょ」と拗ねて口を尖らせた。
ちょっとした騒ぎの中、課長が出勤してくると、野沢くんは興奮に輪を掛けて課長に近づく。
「課長、後任の席には俺の推薦もお忘れなく」
「はいはい、そうだな」
「チェッ、課長までつれないんだからな」
渋々、自分の席へと戻ってきた。
代わりに私が課長の元へと行く。
「三次面接のスケジュールが出来上がりましたので、これから取締役へこちらをお持ちしてきます」
課長に確認のために完成したばかりの表を手渡す。
「よろしく頼んだぞ」
課長は私の目も見ずに答えた。