強引上司にさらわれました

絞り出すような声は、私の胸をどきどきと張りつめさせた。


「ひどい態度を取って、ごめんなさい」

「……いや、謝るのは俺のほうだ。本当に悪いことをしたと思ってる」


課長は私を引き離し、肩に両手を置いて私の顔を覗き込むようにして切なく訴えるような目を向けた。


「ただ、泉を手に入れたいから舞香をけしかけたわけじゃないことはわかってほしい」

「分かってます……」


課長はそんな卑怯なことをする人じゃない。


「想いを告げてダメなら諦めもつくだろうと舞香の背中を押したのは事実だが、元木達也が簡単に振り向くことは計算外だったんだ」

「……そうですよね」


幸せ絶頂にいる結婚間近の人が、簡単にほかの異性になびくとは考えにくいだろう。
こっぴどく振られれば、次のステップに踏めるだろうと思うのは自然なことかもしれない。


「泉につらい思いをさせることになるとは思わなかった」


課長は当惑の眉を潜める。

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