強引上司にさらわれました
うそ! もう! 美優にはめられたんだ!
今生の別れみたいな気分で、課長に想いのすべてをさらけだしてしまったことを今さらながら恥ずかしくなる。
顔が真っ赤になっているのは、耳まで熱を持っていることからも分かった。
でもその反面、一年間も離れ離れじゃなくなったことが嬉しくてたまらない。
「おとなしく待っていられるな?」
課長は私の顔を覗き込んでニッと笑った。
そして、脇に置いていたカバンのポケットを探り始める。
そこから取り出したのは、星をかたどったキーホルダーが付いたカギだった。
……あれ? それ、私がもらった課長の部屋の合いカギ?
でも、私返してないよね。
混乱してしまう。
「これは俺のだ」
頭の中で疑問符が乱舞している私を察して、課長が答えを用意してくれた。
「……課長の?」
つまり、お揃いのキーホルダーが付けられていたの?
私の反応を読み取った課長は、ばつが悪そうに鼻の下をこすった。
「俺が帰る日には部屋にいること。いいな?」
私がいなかったら、課長は部屋に入れないということだ。
「ついでに、荷物をまとめて戻ってこい」
私の頭のてっぺんをぐしゃぐしゃと乱しながら言った。
「……はい」
受け取ったカギを握りしめ課長を見上げると、額にキスが落とされた。