強引上司にさらわれました
◇◇◇
「シカゴに一年なんて嘘ばっかり」
空港からの帰り道に寄った美優の部屋で、私は彼女に不満をぶつけた。
とはいえ、彼女のおかげで課長と想いを通じ合わせることができたのは紛れもない事実だ。
「いい薬だったでしょ?」
「……効きすぎ」
「それじゃ、朝倉課長とうまくいったんだね」
ニコニコしながら私にコーヒーを出してくれた。
美優があんな嘘を吐いて私のお尻を叩かなければ、きっと状況は変化しなかっただろう。
そうなるとやはり、彼女には感謝以外の言葉を口にしてはいけないような気がする。
ちょっと反省してしまった。
「ごめんね、ありがと」
「わかればよろしい。でも、朝倉課長もよっぽど泉のことが好きだったんだね。妹の舞香ちゃんを使って泉を奪うなんてさ」
「……あぁ、それはちょっと違う、かも……」
私と達也の中を無理に割こうとは思っていなかったから。
だから、長い間私のことを想ってくれていながら、行動に移さなかったんだろう。