強引上司にさらわれました
……でも、いったいいつからだったんだろう。
私が新入社員で人材開発課に配属になったときは、まだ別の課長で、朝倉課長になったのは確か三年目くらいだったはず。
それから今までの三年間で、課長の好意を感じたことは身に覚えがないし、そういうことになるきっかけはさっぱりだ。
「そういえば、かずくんは?」
さっきからずっと姿が見えない。
「今日は夜勤だから、ちょっと前に出たの」
「そっか」
お医者様の卵も大変だ。
部屋の片隅を見てみれば、難しそうな医学書がずらりと並んでいる。
それは本棚にも入りきらなくて、テレビ台の上まで積み重なっていた。
「私と泉、どっちの結婚が早いかな」
美優のとんでもない発言にコーヒーを噴き出しそうになる。
結婚はおじゃんにしたばかりだし、課長との結婚なんて話がいくつも飛んでしまっている。
「ちょっとなによそれ」
慌ててコーヒーを飲み込んだせいもあって、声が裏返った。