授かり婚~月満チテ、恋ニナル~
その夜、海外営業部全体の決起会と称した飲み会が行われた。
会場は、オフィスビル近くの繁華街の居酒屋。
全員集まれば総勢四十人になるうちの部の飲み会は、だいたいどこのお店のお座敷席を貸し切っても結構手狭。
いつもと変わらず、みんな割と距離近目でテーブルを囲むことになった。


来栖さんは直前まで外出の予定が入っていて、一次会の途中から遅れてやってきた。
『お疲れ~』とみんなに労いの声を掛けられながら、座敷に足を踏み入れてくる。


話を聞き出そうとウズウズしていた榎戸さんや橋上さんが、『こっちこっち!』と立ち上がりながら手招きするのに従って、お座敷の奥の方に進んでくる。


来栖さんが腰を下ろしたのは、私の後ろのテーブル。
振り返ると、私とも正面から目が合う位置だった。


早速ビール瓶を傾けられる様子を背後に感じながら、私はつい聞き耳を立ててしまう。
後ろのテーブルには橋上さんの他にも来栖さんと同期の男性、石津さんがいて、二人はいつの間にやら結託している雰囲気だった。
遅れてきた来栖さんに、これでもかってくらいお酒を勧めている。


来栖さんは特に疑う様子もなく、苦笑しながら勧められるままにグラスを空け、到着して三十分が経った頃には、目の下をわずかに赤く染めていた。


そのタイミングを待っていたかのように、橋上さんが『ねえ』と切り出した。
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