クールな御曹司の甘いお仕置き
自分が辛い時でもいつも笑っているのだ。

あいつの母親が亡くなった時もそうだっだ。

母親の遺体の前で泣き崩れる父親を必死で励まして、俺達の前では『私は大丈夫だよ』って言って笑ってて……。

でも、そんな美緒の異変に気づいたのは美緒の母親が亡くなって五日後のこと。

美緒の声が突然出なくなったのだ。

あの時、それでも笑顔でいようとするあいつの頬を俺は強くつねった。

『我慢するな。大好きなおばさんが亡くなったんだ。思い切り泣け』

そう言って美緒をギュッと俺の胸に抱くと、あいつは俺にしがみついて堰を切ったように泣いた。

それから数日後に美緒の声は元通りに戻り、周りは安堵したものだ。
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