不器用な二人はあまのじゃくの関係
ドキドキあまあまなデートします。準備編

ドクンッドクンッ

し、心臓が……



学校が終わり、私は家に帰って着替えをしてこの時をずっと待っていた。

「おかーさーん!遥太んち行ってくる!」

「はいはーい。あ、じゃあこのリンゴ持ってって〜♪おばあちゃんにいっぱいもらったけど食べきれないからね」

「あ、うん。…重っ」

お母さんが置いたリンゴを入れた袋を持ったんだけど、めっちゃ重い…
おいしいリンゴなのねあなたたち。


そんなかんじで今に至る。

遥太の家のチャイムを押すだけなのに、ドキドキして苦しい。


ピンポーン


お、押せた。外の寒さのおかげでチャイムを押せた。

「はーい!」

中から遥太のお母さんの美智子さんの声が聞こえる。

「あら、杏奈ちゃんいらっしゃい!どうしたの?こんな時間に。」

「こんばんは。お母さんにリンゴ持ってって頼まれたので来ました。」

「まぁ、ありがとうね〜!」

「あの、あと、遥太に用があって…」

「わかったわ〜。どうぞ、上がって!」

「お邪魔します!」

前まで普通に出入りしてたのに緊張して手汗が尋常じゃない。

「遥太は部屋にいるわ。」

「ありがとうございます!」


ドキドキ


階段をのぼって遥太の部屋の前に着く。


コンコンコン


「はーい」

遥太の部屋のドアを叩くと中から遥太の声が聞こえる。

「杏奈だけど、入るよ。」

「は!まっ!杏奈!は!?」

遥太はテンパってるが、私は容赦なくドアを開ける。緊張してるのバレないようにね。

「は!?待てっつったよな!」

「聞こえなかったわよ。」

スタスタと遥太のマンガ本が並べてある本棚に向かう。
とりあえずテキトーにマンガを取る。

「あ!それ新しいやつ!さっき買ってきたばっかなのに!」

「借りるよ。すぐ返すから」

「おう!」

緊張でそっけないかんじになってしまう。
言わなきゃ。

「…」

「何黙ってんだよ?なんかあったか?」

遥太は優しい。心配してくれる。

「…あのさ!来週の旗日…休みなんでしょ?」

遥太のほうをバッと向いて話しかける。
久しぶりに真っ直ぐ遥太の顔を見る。
やっぱり…かっこいい。

「あぁ。そうだけど誰に聞いたの?」

「ゆ、優梨!」

「あーなるほどな。で、なに?」

「その日さ…魚見たい!」

テンパった…魚見たいって何よそれ!どういう感情よ!

「ははっ!魚って(笑)」

「な、なによ。」

「水族館な!ほんと杏奈は水族館好きだよな〜。ご飯に魚出されると怒るくせに(笑)」


ドキッ


「食べるのはやだけど見るのは好きなのよ!きれいだもん」

覚えててくれてる。私のこと。
それだけでうれしいよ。
なんて思ってるけど知られたくなくて横を向いて答えた。

「水族館久しぶりだなぁ〜」

「うん…じゃあ、来週、午後1時に私の家ね!おやすみ!」

「あ、おう。」

私はその後何も言わないで遥太の部屋を出ていった。

< 27 / 70 >

この作品をシェア

pagetop