距離0センチ



いつもより薄着だから、彼の胸板の頼もしさに。


いつもは分からない、彼の心臓の音に。

ドクドクドクと、速い。



今から大会だから緊張してるの?

ウォーミングアップでもして、心拍数が上がったの?

それとも、いつも……?




そんなこと私には分からないし、聞けないけど。




そんなことを考えていたら、そっと彼が腕を緩めた。



距離をとって、向かい合う。




「……」

「紫乃先輩?」



知らなかった……。


立花君は犬みたいに可愛らしい後輩なのに、腕は意外にも筋肉がついていた。





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