オオカミ専務との秘めごと

「菜緒、お昼行こう」


お昼のチャイムが鳴り、佐奈と一緒に社員食堂に向かう。

私はお弁当で、佐奈は食堂のランチメニュー。

先に席を取って待っていると、佐奈はきつねうどんをテーブルの上に置いて座った。


「あれ?今日はそれだけでいいの?」


思わず聞いてしまう。

佐奈は体形に似合わず大食いで、いつもはカツ丼大盛りなんか平気で平らげちゃうのに、具合が悪いんだろうか。


「うん、ちょっとね・・・ね、菜緒。駄目もとで訊くんだけど、今夜時間ある?」

「あ、うん。今日はなにも予定がないよ?」

「じゃあさ・・・合コンに、行かない?」

「え・・・」


あからさまに顔を歪めると、佐奈はパン!と両手を合わせてお願いポーズをした。


「行く予定だった子が残業になったって、今そこで聞いたの。一人欠員ができちゃって」

「佐奈・・・私が合コンは苦手だって知ってるでしょ?」

「分かってる!でも、お願い。私今日の合コンの幹事でさ。困ってる友人を助けると思って!それに、今日はいい人に出会えるかもしれないし!」


佐奈が合コンに誘ってくるのはこれが初めてではない。

こんなふうに欠員ができた時だけでなく、毎回と言っていいほど根気よく誘ってくれる。

新聞配達のバイトがあるから夜九時には寝たくて「苦手だから」と断ってばかりだけど、それでも一度だけ参加したことがある。

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