オオカミ専務との秘めごと
アパートの部屋は六畳の和室で、クローゼットと言う名の押し入れの扉は松の木模様が素敵な襖。
テーブルという名のミニこたつはめちゃめちゃ和風だけれど、食べるときの気分だけは、いつもお洒落なカフェ風にしている。
質素でも最大限に楽しむ工夫だ。
「いただきます!」
具材が落ちないよう慎重にパン耳をつまみあげて口に運ぶ。
もぐもぐしていると、玄関のチャイムがピンポンと鳴った。
反射的に目覚まし時計を見ると、時計の針は八時前をさしている。
こんな時間に尋ねてくるのは、誰だろう?
「はい、どなたですか?」
「トビウオハイヤーです」
「・・・は?」
一瞬自分の耳を疑ってしまう。
ハイヤー?そんな高級なものがこんなアパートに来るなんて超怪しい。
オレオレ詐欺から進化した、新手の詐欺かもしれない。
咄嗟にそう思ったけれど、チェーンをしたままドアを開けてみた。
男性はスーツを着て白い手袋をしており、まるで執事のような姿をしている。
確かに、ハイヤーの運転手っぽいけれど・・・。
「何かの間違いじゃないですか?頼んでいませんし」
「いいえ、こちらにお住いの神崎菜緒さまですよね?」
「はい、そうですが」
「大神さまよりご依頼がございまして、あなたさまをお迎えに上がりました」
「えええ!?大神さんから!?ちょ、ちょっと待っててください!」
急いでピンクスマホを確認するが、何も連絡が入っていない。
お仕事依頼もなく突然のお迎えなんて、もしも私が家にいなかったらどうするつもりだったんだろうか。