オオカミ専務との秘めごと

食べかけのパン耳ピザはもったいないので包んで冷凍庫に仕舞い、コーヒーは冷めかけていたので一気に飲み干す。

何はともあれ、待ちに待ったお仕事だ!

あたふたと準備を済ませて外に出ると、駐車場のパカパカと点滅するしょぼい灯りの下に黒い立派な乗用車が停まっていた。

運転手が恭しく開けてくれたドアから乗り込むと、静かに走り始める。


「あの、もしも私が家にいなかったら、運転手さんはどうしていましたか?」

「お帰りになられるまで、ずっとお待ちしていました。そういうご依頼ですので」

「はあ、そうですか」


運転手さんは、大神さんと連絡を取り合いながら、朝までも待つ予定だったという。

どうしてそこまでしてハイヤーを?


「それで、今からどこに行くんですか?」

「それは、内緒でございます」


内緒──。

そんなことを言うから、どこか特別な場所に連れていかれるのかと思いきや、車が停まったのは大神さんのマンションだった。


ハイヤーを頼んでまで・・・普通に連絡をくれれば電車で来たのに・・・。

大神さんは何を考えているんだろうか。

セレブのすることは、理解不能だ。


「大神さまは、お部屋でお待ちでございます」


部屋番号のメモを渡されてマンションの中へ入る。

つるつるピカピカの壁は茶色で、床は絨毯敷きで足音は全くしない。

間接照明で暗めの廊下は、ちょっとわくわくした気分にさせる。




< 121 / 189 >

この作品をシェア

pagetop