オオカミ専務との秘めごと
暗い廊下とは反対に、玄関ドアまわりは一応明るい。
ピンポンを押すとしばらくしてドアが開き、挨拶を言う間もなく腕を引かれて、中に入れられた。
そのまま玄関の壁に押し付けられ、壁と大神さんの間に閉じ込められる。
「あの、え?」
見上げれば、眼光鋭く眉間にシワを寄せ、すごく怖い顔をしている。
あまりに予想外の展開で、思わずバッグを抱き締めた。
「どうして、お前は、俺に何も言ってこねえんだ」
「は、はい?」
「渡したスマホがあるんだ。普通なら、メールでも電話でも、バンバンしてくるだろうが」
最初は言っている意味が分からなかったが、どうやらお仕事依頼のことみたい?
「え・・・バンバン要求しても良かったんですか?」
尋ね返すと、今度は大神さんが首を傾げた。
「・・・要求?」
「忙しいと迷惑かもと思って、遠慮していたんです」
しばらく無言のまま怪訝そうにしていた彼は、「ああ、そっちか・・・」と言って天井を仰いだ。
「お前は、俺が忙しいかどうかなんか、気にするな」
大神さんは呟くように言うと、私を玄関の壁から引きはがした。
そしてなぜか今度は腕の中に閉じ込められてしまい、私の中の時が一瞬止まった。