オオカミ専務との秘めごと

その塩田さんが、今日は元気がなく見える。

仕事の失敗をしちゃったんだろうか。

佐奈もそれに気付いたようで、彼女の様子をうかがうようにチラチラ見ている。


「塩ちゃん、どうかした?なんか元気ないよ。仕事でなにかあった?」


佐奈が問いかけると、塩田さんは首を横に振って私をちらっと見て目を伏せた。

もしかして私のこと?と尋ねると、彼女は小さく頷いた。


「あの、いずれ分かっちゃうことなんですけど・・・」

「なあに、塩ちゃん。勿体ぶらないで、はっきりと菜緒に言ってあげてよ」

「専務のことなんです」


塩田さんはお箸を置いて、私の手をきゅっと握った。

その目にうっすらと涙が浮かんでいる。


「・・・専務が、どうしました?」

「神崎さん、どうか気落ちしないで聞いてください」


私の『恋の応援団』の一員である彼女が“気落ちするな”ということは、専務が異動していなくなるとか、そういうことだろうか。

それとも・・・?


「はい、強く覚悟しました。どうぞ」

「専務についている秘書さんのことなんですけど」


専務の秘書といえば、あのきりっとしたまとめ髪の理知的な人だ。


「あの人が、専務に『好きです』って告白したそうなんです」

「えーっ、あの人が!?意外ー!」


私が驚きの声を上げるよりも先に、佐奈がびっくり声を出して私の言いたいことを言ってしまい、私は口をパクパク開け閉めするだけになる。


「仕事をしているうちに専務の人間性とかが分かって、好きになってしまったそうで、思い切って告白したらしいんです」

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