オオカミ専務との秘めごと

楢崎さんに注意されて、やる気を出したのかな。

なんだか嬉しくなって、拭く手にも力が入る。

是非とも持続して、このままスッキリデスクを目指してほしい。


それと、もう一個。佐奈のデスクの変化。

彼女のマウスパッドが南国の海に変わっていて、キャラクターグッズが消えうせていた。

パッドは、二人で見た例のサイトで作ってもらったものかもしれない。

ピンクだったマウスもエメラルドグリーンの海に合わせて、黄緑色に変わっている。

佐奈らしいというか、なかなかのこだわりぶりだ。


雑巾を片付けて部に戻ると、楢崎さんを含めた何人かが出勤していた。

楢崎さんは既にパソコンを立ち上げて仕事を開始していて、男性営業もどこかに電話をしている。

今は一分一秒でも無駄にしたくない、そのくらい忙しいのだろう。

私も専務のことを考えてぼんやりしたりせず、気を引き締めてミスしないようにしなくちゃ。


朝一のメールチェックからルーティンワークを終え、課長に頼まれた書類を作成し始める。

途中まで作っていて、ふと去年の店舗データが必要なことに気が付いた。

去年のものといったら、勿論、書庫の中。

それがないとどうにも仕事が進められない。

行くしかないか・・・。


「佐奈、書庫に行ってくるね」

「んー、何か探し物?」


佐奈はパソコン画面から目を離さず、マウスをカチカチさせながら言う。

それだけ彼女も忙しいということだ。


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