オオカミ専務との秘めごと

そうしているうちに、彼は営業主任の楢崎さんに雰囲気が似ていると気がついた。

人当たりがソフトで、私のつたない話をちゃんと聞いてくれる。

もしかしたら、すごくいい人に出会えたのかもしれない。

運命の人、かも・・・。


会話の合間に何気なく佐奈を探すと、どこにも姿がなかった。

お手洗いに行ったんだろうか。


「神崎さん。よそ見は、禁止です」


ふと、膝に置いていた手に温もりを感じ、見ると松野下さんが手を重ねていた。


「あ、あの?」

「俺、神崎さんのこと、もっと知りたい」

「え?」


驚いて手を引っ込めようとするとぎゅっと握られ、彼はぐっと近づいてきた。


「このあと、二人きりで飲みなおそうか?」


耳元でささやくように言われて、心臓がドクドクと脈打つ。


これは、行くべきなんだろうか。

行ったらどうなる?


合コン初心者な私にはレベルが高すぎる展開で判断に迷ってしまう。

曖昧に首を傾げると、急に松野下さんが「あ、ちょっと失礼。待ってて」と、一層強く手を握ったあと席を立った。

松野下さんの温度が残る左手をじっと見つめる。

どうしたらいいんだろう。

ドキドキしすぎて頭が熱っぽく、冷静な判断ができないでいる。

少し頭を冷やしたほうがいいかもしれない。

私もお手洗い行くべく席を立った。


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