オオカミ専務との秘めごと


その夜の就寝前、ベッドの枕を整えていると、スマホが着信を告げた。


「LINE・・・雄太だ」


夕方に海外赴任のことを書いて意見を求めたから、その返事が書かれているはず。

どう思ったかな。

えいっと開いてみると、予想外の文字が綴られていた。


『思う通りにしたらいいよ。それ、すげーチャンスじゃん。スキルアップできるだろ。俺は一人でも大丈夫』


雄太の返事は弟としてのそれとは違い、長谷部さんのような、大人の男性そのものだった。

ずっと甘えん坊だったのに、知らないうちに成長して大人の考えを持つようになったんだ。

でも雄太の承諾を得たからといって「はい、行きます」と簡単に言えないのが悩みどころ。


『こっちの生活は、なんとかなるよ』


“なんとかなる”など、何の根拠もないことを、うさぎが胸叩きポーズをしている“任せろ”スタンプ付きで言われても、姉としては困惑してしまう。

大人の考えを持ったとはいえ、まだまだ若くて考えが甘い。

弟がお金の工面で辛い思いをするのは、想像するだけで哀しいことだ。

それを伝えると、雄太の吹き出しがすぐに現れた。


『何言ってんだよ』

『今まで、俺のために、いろんなこと我慢してきただろ』

『思い切って飛んでみろよ』

『気にすんな』

『そろそろ好きなことをしてくれ』

『まだ学生だけど、俺はもう子供じゃないんだぜ』


返信する暇も与えられずに連続して現れる吹き出しから、雄太の思いが伝わってくる。


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