オオカミ専務との秘めごと
長谷部さん・・・彼も、なんだ。
彼なら、スキルアップのために喜んでいくかもしれない。
「部長、お話の業務内容なら、彼女は適任です。ですが、プライベートの事情もありますので、すぐの返事は無理でしょう」
返事に困る私を見兼ねたのか、楢崎さんが助け舟を出してくれた。
「そういえば、姉弟二人だけの家族だったか」
「はい。弟はまだ大学生です」
「そうか・・・考えておいてくれ。来週末までに返事をくれないか」
「はい。わかりました」
人事部長が会議室から出ていくと、楢崎さんも席を立った。
「神崎さん、弟さんのそばから離れられないなら、断ることもできるから」
「はい」
そう言ってくれて少し安堵する。
でもこれからいろいろ考えなければいけない。
専務は予定通りなら月曜辺りに帰国してくるはず。
私にも、彼に『伝えたいこと』ができてしまった。
彼は何て言うだろうか・・・。
「菜緒、ちょっと顔色が悪いよ。何の話だったの?」
部に戻ると、佐奈が心配そうに問いかけてきた。
「仕事の仕方について話をしただけだよ」
「そうなの?」
訝しそうにしている彼女に仕事をするように言って、私もパソコンに向かう。
長谷部さんが海外赴任すると聞いたら、佐奈はどう思うかな。
長谷部さんは「変わる」と言った矢先のことだ。
彼は佐奈のこと、どうするんだろうか。
そして私は、どうしたいんだろう。