オオカミ専務との秘めごと
そしてお昼。
社員食堂では窓際のテーブルをゲットでき、ポカポカあたたまりながらのランチになった。
窓際の席は大抵いつも総務部の女子たちで埋まっているので、こんなことでもラッキーに感じてしまう。
ホクホクしながら食事をしていると、トレイを持ってテーブルを捜す楢崎さんが目に入り、話題が自然と午前中に起きた翻訳騒ぎのことになる。
「でもさすが楢崎主任だよね。“俺が訳す”なんて。私にはよくわからないけど、フランス語で法律用語満載の書類なんでしょ?そうそう言えることじゃないわ。素敵よね~。あんな人が彼氏なら最高だけど、既に人のものだもんね」
いい男はみんな人のもの~と、佐奈は嘆くように言ってフォークをキュウリに突き刺した。
そんな佐奈に、前から気になっていることを訊いてみる。
長谷部さんとのこと。
佐奈がフリーになってからというもの、しょっちゅう食事に誘われているけれど、実際どう思っているんだろうか。
「ね・・・長谷部さんは?二課のエリートだし、将来有望な人でしょ。佐奈の事好きみたいだけど」
そう言った途端、佐奈の顔がうんざりとした表情に変わった。
「やだ、菜緒ったら冗談言わないでよ。あんなチャラ男はイヤだよ。いつ見ても女子社員に囲まれて、へらへら笑ってるんだから」
そう言って佐奈は強めの視線を食堂の中心部へ向けた。