オオカミ専務との秘めごと

視線をたどると、女子社員と一緒にテーブルに座っている長谷部さんがいた。

どこの部署かはわからないけど、楽しそうに話している彼女たちの様子は、長谷部さんに好意を寄せているように見える。

彼は営業部の社員の中でも背が高い方で、顔はさわやかな塩系。

社内では目立つようで、結構モテているみたいだ。


「長谷部さんは、とっかえひっかえデートしてるみたいなの。あんなふうに傍に寄ってくる、自分に気がある女を誘ってるんだと思う。私は一途な人がいいから、長谷部さんはナシ」

「そうなんだ。そんな人には見えなかったけどな」

「菜緒、騙されちゃダメ。あの人は十分そう見えるから。菜緒に翻訳頼みに来た時も『できる?』なんて、ものすご~く軽かったでしょ。菜緒が忙しいの見てわかるのに。だから私もキレちゃったんだけどさ」


そう言われればそうかと思う。

でも、頼み方はちょっと首を傾げるけれど、一課まで来たのはそれだけ切羽詰まってたってことじゃないんだろうか。

それにどこがどうってはっきり言えないけど、佐奈に対する彼の態度は、今話している子たちとは違うように感じる。

それは私が恋愛初心者だから、そう思うだけかな。


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