オオカミ専務との秘めごと

午後は集計作業をしながら日常業務をこなし、いつも通り定時に仕事を終える。

本当は一時間ほど残業して少しでも集計を進めたいところだが、今日は行きつけスーパーの特売日でお肉が安い上にポイント二倍の日!

うちの小さな冷蔵庫の中には、野菜はあれどもハムを含めた肉類はゼロ。

買い物に行って一週間分のお肉をゲットしなきゃならない。

デスクの上をサッと片付けてパソコンを終了させ、佐奈たちに挨拶をして営業部から出た。


「只今、専務注意報発令中!」の社内。

お昼の出来事もあって、どこでばったり会うか分からないのが怖い。

前後左右に気を配りながら歩き、エレベーターに乗るのも慎重になる。

定時帰りの社員たちの間に紛れるように立ち、バッグを胸に抱きしめていつでも顔を隠せるようにした。

エレベーターを降りたら左右をみて専務の姿がないことを確認し、競歩の選手のような超速でエントランスを目指す。

ゆっくり歩く人たちを追い越しIDカードを素早く機械にかざして守衛に挨拶をする。


会社から一歩外に出ればもう一安心と、普段通りの速度で駅に向かう。

夕暮れの街には街灯がともり、家路を急ぐ人もいればこれから街に繰り出す人もいる。

駅前のデパートのウィンドウは春らしい桜色の飾りつけに変わっていて、マネキンはパステルカラーの服を着ていた。


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